カクヨム甲子園の「キングジム賞」について語る
2024年12月20日にカクヨム甲子園の「キングジム賞」2作品が発表されていました。受賞したお二方、おめでとうございます。受賞者に贈られるポメラDM250をたくさん使ってください!
カクヨム甲子園・キングジム賞とは?
カクヨム甲子園は、小説投稿サイト「カクヨム」が行った高校生を対象とした小説のコンテスト。ショート部門(400~4,000字)とロング部門(6,000~20,000字)がありました。キングジム賞については以下に引用をします。
【カクヨム甲子園2024「キングジム賞」設置決定!】
高校生活でも、部活や学業、趣味の時間……と、日々さまざまな道具と共に過ごされていると思います。
そんな日常での道具との接点から、自由に発想を広げた作品をぜひ読んでみたいです。たとえば……
・本当にこんな道具があったら、もっと面白く/便利になるんじゃない!?というアイデア性を感じる作品
・生活に寄り添うような道具が登場する作品
・道具を起点に、物語が動くような工夫がある作品
などなど。もちろん上記に限りません。現実に存在しない道具でもOK!
我々の想定を超えるような、あっと驚くような作品をお待ちしております。
最高の「書く」を味わえるツールで、さらなる小説執筆の高みへ!カクヨム甲子園2024「キングジム賞」設置決定!
https://kakuyomu.jp/info/entry/kakuyomukoushien2024_kingjim
エントリーのあった43作品(※自分で数えたので間違っていたらすみません)の中からショート部門は「Devote to you.」ロング部門は「名探偵と気まぐれな彼女」が選ばれました。
それぞれリンクを張っておきます。
■ 名探偵と気まぐれな彼女 (楠 夏目)
■ Devote to you.(落ちこぼれ侍)
ロング部門の「名探偵と気まぐれな彼女」は納得の一作でした。
私は「道具」と聞いて、『職人の道具』のように誰か一人によって特に大事にされるものを想像したのですが本作で取り上げられたのは「足つぼマット」。家族共有で使われて、そして、気づけばぞんざいに扱われる道具。
だからこそ今回の「事件」が起こり、そして解決に至るという。普段は目立たないタイプの道具にスポットライトを当てていてとても面白く読みました。
若干展開にぎこちなさを感じることもありましたが、何が起こっているのかはよくわかりましたし、筆を執った思いも伝わりました。ぜひポメラDM250を使ってたくさん書いていってほしいです。
ショート部門の「Devote to you.」に関しては、演出が上手でぐいぐい読めます。実際、この方の別の作品「消しゴムの角が丸くなる頃に……」はショート部門で本選(カクヨム甲子園)の中間選考まで残っています。相当な実力者なのでしょう。
ただ、「Devote to you.」に『道具』が出てきたかと言うとちょっと微妙……なんですよね。(「消しゴムの角~」の方が賞の趣旨に近い)強いて言うなら応援用のユニフォームやマスコットのストラップとか?イルカのぬいぐるみ、コンビニのポカリ等、たくさん「物(モノ)」は出てくるのですが、これらが「道具」かと言われると否と答えるしかない。とはいえ、受賞しているので、キングジムの考える「道具」の定義を広く取られたか、無視したのだと思います。
道具って何だっけ……物(モノ)とどう区別を付けたらいいのかな、と思ったのでポメラの国語辞典の「道具」の項目を置いておきます。

選考を担当した初代ポメラを作った立石さんは道具と物(モノ)を厳密に区別はせず「こういう青春は素敵だな」とか「この物語(作品)はすごい・面白い」という純粋な作品の良さで選ばれたのかなと思います。
追記(立石さん「モノ」って言ってた)
後からみたら、選考を担当した立石さんのコメント(引用します)が載っていて「モノ」に言及されていました。
この度、高校生限定の小説コンテストの審査員という貴重な経験をさせていただきました。実は昔、私自身も読み切りの短編小説を執筆しブログで公開していたことがあり、今回のコンテスト参加にご縁を感じています。キングジム賞で設定したテーマは『道具』。私たちの日常に溢れる「モノ」を起点にいったいどんな「コト」が広がっていくのか、わくわくした気持ちで皆さんのアイデアを読ませていただきました。どの作品にも、高校生という今だからこそ放てる一瞬のきらめきを感じ、とても感動いたしました。キングジムのパーパスは『独創的な商品を開発し、新たな文化の創造をもって社会に貢献する』です。1人1人異なる個性が新しいカルチャーをはぐくみ、未来を変えていく。皆さんの作品がまさに、時代を切り開くきっかけになることを願っています。改めてこの度このような機会をいただいたことに感謝申し上げます。ありがとうございました。
【高校生限定】カクヨム甲子園2024 受賞作が決定しました
https://kakuyomu.jp/contests/kakuyomukoshien2024
あえて言う(文学賞の審査って難しい……)
厳しいことを申し上げると、キングジムは「キングジム賞」への準備が足りなかったような気がします。
例えばお笑いなどの賞レースを思い浮かべてください。お笑いそのものと同じかそれ以上に審査(員)が注目され、話題になりますよね。見られるのは作品だけではないのです。
今回、「道具」のテーマ設定は妥当だと思いますが、なぜ道具を選んだのかという理由は応募者に伝わる内容だったか。「道具を作っている会社だから」で済ませていなかったか。(というのも、テーマを理解していない、あるいは『道具』がテーマであることは理解しているが、キングジムがなぜこの賞を設けたのか明らかに把握できていない作品もありました)
また、審査に関しても「道具とは何か」の掘り下げが足りていたのか。テーマに沿っていないが完成度の高い作品と、テーマに沿っているが、完成度が前者に劣後する作品が候補として残ったときはどう対応するのか決めていたのか。おそらく想定されていなかったと思います。
もし、今後も「キングジム賞」を続けられるのであれば、このあたりに気を配って取り組まれるとより充実した企画になると思います。
(自分語りしちゃうよ)
私は、以前「ウィズポメラ企画」(※これは写真の企画)や「ポメラ文学賞」を主催したことがあります。私は写真や小説の審査をする自信がなかったので前者は抽選で朗読作品を決定し、「ポメラ文学賞」ではプロの方にご協力いただきました。後者はテーマの縛りがなく、フォーマットの指定も無い、ゆるーい賞でしたが、(だからこそ?)一つに決める難しさがありました。収穫も多かったですが、反省も多い企画になりました。
これらの企画をまたやるかは今のところ未定ですが、ポメラ界を盛り上げるようなことはやっていきたいという思いはあります。