ポメラ「失敗作」DM5は再評価されうる機種である
たまにはDM200ではない話題をしようと思います。
ポメラの中で大変興味深い機種があります。それがDM5。キングジムの関係者がはっきりと「失敗だった」と言っている機種です。
キングジムは「失敗」から学ぶ会社
少し前に掲載されたダイヤモンドオンラインの宮本社長のインタビュー。非常に逆境を逆手に取った戦略が紹介されていて面白く読みました。「ダメそうなら諦める、売れそうなら売ってみる」至言ですね。
ダメそうなら諦める、売れそうなら売ってみる。キングジムはその意思決定のハードルが非常に低いです。思いついたらすぐに出すことが一番大事です。問題が生じたら改善すればいい。ダメなら何らかの反応が返ってくるわけですから
「売れないものは諦める」で過去最高益、キングジム社長が語るコロナ禍の闘い方
https://diamond.jp/articles/-/288628
以前紹介した記事(……としてからまだ公開していなかったことに気づく。公開したらここに入れる)にもあるようにポメラDM5は「失敗」、「売れなかった」と言われている機種です。それは宮本社長だけでなく、初代ポメラ開発担当者の立石さんもインタビュー(2021年11月の中日新聞)で触れています。
DM5とはどんな機種か
DM5は2010年発売の「フレンドリーモデル」。軽量で色やデザインは女性向け。機能はDM20より限定的です。1ファイルの最大文字数が約8000字。本体メモリは約128K。ファイル管理ができない、QRコードも作れない、画面のサイズは4インチのぶっちゃけて言えば「廉価版」でした。当時のキャッチコピーはこちら(テキストクリックでキングジムのページに飛びます)
電源オンから2秒で起動、いつでもどこでもメモがとれる「ポメラ」にフレンドリーモデル登場
デジタルメモ「ポメラ」DM5発売
~親しみやすいデザインとお求めやすい価格を両立~
この機種を出した目的はなにか。いくつかインタビューが残っていますがそこで「市場を作る」ことを目指しているという発言があります。メジャー化させたいということですね。その先には、ポメラをもっと一般化させたい→廉価版を出してポメラを知ってもらう→物足りなくなった人が上位機種(当時はDM20)を購入する。という流れを狙っていたようです。
DM5は売れなかった
前述のようにこの機種は売れませんでした。
その原因はポメラ初代開発者の立石さんも宮本社長も「ポメラがほしい人は妥協した買い物をしない」ということがわかったと各種インタビューで語っています。つまりポメラを求める人(ポメラユーザー)は、多少値段が高かろうと書くことにより特化した高機能な機種をほしがるということを会社として把握したということです。このことは、PC向けATOKをポメラに入れたDM200の開発陣にも受け継がれていると思います。
(蛇足ですが、この経験を踏まえてキングジムは廉価版ポメラは出さないであろうしポメラ新型はDM200を超えるスペックを載せてくるだろうと予想しています……)
DM5は「ポメラらしいポメラ」
DM5は再評価されてもいいと思っています。それは「ポメラらしいポメラ」だからです。
●軽量・コンパクト(折り畳み)
●乾電池駆動
●バッテリーもち25時間
何しろ、「折り畳み」と「乾電池駆動」という2ケタポメラを愛するポメラユーザーが求める条件がそろっています。またこの令和の時代になっても加水分解していない。そう、DM10もDM20も高級感を追求した結果、経年によってベタベタしてしまう素材が使われているのですが、DM5はそれがない。
そして何より廉価。
「ポメラは安い」という先入観をもたれがちですが、初代から安くは無いです(ニッチ商品なので安価で作れない)。しかしこの機種は定価2万790円(税込)と、最初からお安い価格で販売されていました。実売は1.5万くらいでしょうか。今でも運がよければ1万円を切る価格で購入できたりします(自分用アマゾンリンク)。
ある意味でとても「ポメラらしいポメラ」はDM5のような気がします。現在、残念ながらベタベタで使えない、あるいは手入れが必要なDM10やDM20と比べると再評価される可能性を秘めていると思っています。
ポメラDM5はこんな人におすすめ!
ポメラDM5はこういう人におすすめしたいと思います。
● ポメラに興味があるが、現行機種は高くて手が出ない
● 折り畳み・乾電池駆動のポメラがほしい
● 目にやさしいポメラがほしい(モノクロ液晶)
● かわいいポメラがほしい
● ポメラが自分に合っているか(財布のダメージを少なく)確かめたい
いかがでしょうか。ポメラDM5。製造数量が多かったからか、今でも入手しやすいモデルであることも魅力の一つです。ポメラ史においても大きな意味を持つ機種ですが、今でも活躍の場がありそうな気がします。知らなかった、という方も興味を持ってもらえたら嬉しいです。